鈴木大地選手へのクソデカ感情の餞
大地 力の限り 踏み出せ魂を震わせて
大地 希望の空へ 風を超えて突き進め
2019年11月17日、千葉ロッテマリーンズの鈴木大地選手が、正式に東北楽天ゴールデンイーグルスへのFA移籍を発表した。ファンには球団からの発表に合わせ、異例の「本人出演動画」によって肉声でもそのことが伝えられた。
多分、多くのファン達が涙を堪えて彼の門出を祝ったことだろうと思う。私もその1人だ。それだけ、私たちにとって鈴木大地の存在は大きすぎる。
今日はそんな鈴木大地への私の想いを綴りたい。そしてそれを彼の新しい人生への餞の言葉に代えさせてもらおうと思う。
俺たちのキャプテン大地
まずは、鈴木大地がどんな選手なのかをお伝えしたい。
静岡県駿東郡小山町の足柄地区出身、1989年生まれ。右投げ左打ちの内野手。どちらかと言うと小柄な方だが、堅実な守備が売りだ。神奈川の桐蔭学園から東洋大学へ進学し、大学時代は主将を務めている。このキャプテンシーはプロ入り後も発揮されており、若手の多いチームをまとめ、ファンの心をぐっとつかんだ。2014年から2017年までキャプテンを務めあげている。
今こそ羽ばたけ 遥かなる空へ 風になれ大地 ひたむきに進め
これは鈴木大地に作られた最初の応援歌だ。
歌詞の通り彼は野球人としてとてもまじめで、真摯で、ひたむきで、一所懸命な選手だ。野球を、ファンを愛してくれているんだろうということが伝わってくる。エピソードをいくつか紹介しよう。
ここでは、彼の愛称である「大地」で統一して彼の名を呼びたい。
祈りと礼のルーティン
大地には2つのルーティンがある。守備のルーティンと、打撃のルーティンである。
守備のルーティンでは、初回守備位置につくとぺたんとおしりをつき、右手を地につける。そして左手のグローブを額に当ててグラウンドに祈る。
打撃のルーティンは、ピョンピョンと高く飛んで、審判に例をしてから打席に入ることだ。
その姿から、野球への真剣な想いを見て取れる。試合でこの動作を見ると、なんだか温かい気持ちになれるのだ。
仲間思いのキャプテン
大地には入団当初、同い年の4人の同期がいた。益田尚也、藤岡貴裕、中後悠平だ。今は益田以外はロッテにいないけれど、ファンから見ても彼らはいつも仲が良かった。
益田とはプライベートでも遊ぶようで、益田のSNSによく登場していたし、東洋大学時代からのチームメイトだった藤岡貴裕(ドラフト1位指名)には、彼がいなければ自分がプロの目に留まることはなかったと感謝をしているなど、微笑ましいエピソードがたくさんある。
後から入って来た後輩たちにも、先輩たちにも、大地はよくグラウンドで声をかけていた。打たれている投手にも真っ先に声をかけていたし、良いことがあると若手で集まってはロータッチをして場を盛り上げていた。
そうやってチームを盛り上げる姿が、球場全体を和やかでポジティブな雰囲気にしていた。
We are
「We are」は2015年シーズン途中から、球団側*1からの提案で始まった勝利の儀式だ。勝ち試合後、若手の選手数名が外野スタンド前まで来て肩を組み「We are 千葉ロッテ!」と叫び、観客とともに飛ぶ。
最初は反応の良くなかったこの取り組みを、千葉ロッテ名物にしたのは他でもない大地だ。「2016年シーズンは、全勝ち試合でやる」当時キャプテンだった大地の英断。打てなかった日、エラーをした日、スランプ期間。それでも大地は先頭を切って選手を引き連れ、私たちファンの前に姿を現してくれた。
はじめは戸惑ったファンも多かったと思われるが、いつでもそうやってファンの所に来てくれる大地の気持ちは確実に伝わってきた。そのうち自然とファンも全員肩を組み、選手と数回「We are!」の掛け合いの後をした後、一緒に「千葉ロッテ!」と叫びながら飛び、勝利の喜びを分かち合うようになった。選手とファンが一体となる瞬間だ。
その後、儀式は他球団ファンにも広く知られることとなり、マリンフィールドでオールスターが開催された日には「We are パリーグ!」が叫ばれることとなる。
大地の野球への想い、そしてファンへの想いは、ポジティブな感情として確実にファン達に伝播していっていた。この功績の大きさは計り知れない。
千葉ロッテマリーンズは、弱い。
決してAクラス常連ではない。若く、粗削りな選手も多く、泥臭い野球をする。
大地だって然りだ。もちろん素晴らしい選手だけれど、往年の西岡剛のようなスター性はないし、どちらかというと地味である。それが千葉ロッテらしくもあるけれど。
でもファンは皆そんなチームが大好きだ。千葉ロッテマリーンズの何よりの魅力は、球場の一体感。TEAM26というファンクラブの名称の通り、「ファンは26番目のベンチ入り選手」として扱われ、選手とファンとの垣根がとても低いことが特徴だ。
大地がキャプテンになってからは、さらにその垣根がなくなったように思える。*2
毎月行われるプチファン感謝デーのイベントでは、大地はファンひとりひとりの目を見てしっかり握手してくれた。チーム事情がどうであれ、ファンに向き合ってくれ、真剣に野球に向き合っている、そんな大地が皆大好きだったと思う。
大地の登場曲はFUNKY MONKEY BABYSの「告白」。
大好きだ 大好きなんだ それ以上の言葉を もっと上手に届けたいけど
どうしようもなく 溢れ出す 想いを伝えると やっぱ 大好きしか出てこない
大地ーーーーーーーーーーーーー!!
ファンは登場曲を歌い、その日一番の大声援で大地を迎える。
私たちの大地への「大好き」の証である。
大地の作ってくれた「千葉ロッテマリーンズ」と、彼の決断
自分もまだ20代と若いのに、チームメイトを鼓舞して引っ張り、ファンと選手を繋げてくれ、皆で同じ方向を向けるように先導してくれた大地。2017年には新しい応援歌も作られた。それが冒頭のフレーズである。WANIMAのTHANXのメロディに載せて歌われる。
そんな大地がFA権を取得する日が来た。そして行使。異例の「残留を願って来年度のカレンダーにも大地が起用される」という事態も起こった。2019年のファン感謝デーではファンが大地の応援歌を歌い、皆で一緒に「Wa are」を叫んだが、これが大地と私たちの最後の「We are」になってしまった。
ファン感謝デーが終わってすぐ、大地は移籍を発表した。
若い大地がこれまで背負ってきたものはどれほど大きなものだっただろう。多分、私の心にぽっかり空いた穴より、ずっとずっと大きく、重く、辛い物だったと思う。
それでも彼はこれまで笑顔で私たちを導いてくれた。私は彼のおかげで、千葉ロッテマリーンズが前よりずーーーっと好きになったんだ。
それに、最後まで大地は逃げずに動画で私たちにお別れの挨拶をしてくれた。
We areの思い出、ファンへの感謝、マリーンズが好きであることに変わりはないこと、挑戦することを決めたからには絶対に半端なことにはしないという決意。涙なしでは見られなかった。
私はその動画を出張先からの帰り道の車中で見たのだが、渋滞中で助かった。カーステレオでファンモンの告白とWANIMAのTHANXを流し、歌いながら泣いて泣いて、前が全然見えなくなったからだ。
私たちを気持ち悪い野球オタク*3と思わず、ファン―――ひいてはTEAM26として、チームの一員として見てくれる大地。
ほぼ同年代で、大地と同じく30歳になる年にFA(転職)した私には、大地の挑戦したいという決断も痛いくらい分かった。きっと同じ思いのファンも沢山いたことだろう。
大地、本当に今まで夢を見させてくれてありがとう。千葉ロッテマリーンズを、野球をもっと好きにさせてくれてありがとう。
最後に大地に伝えたいことは、渋滞する常磐道でもう決めていた。
大地の応援歌としてずっと歌ってきたWANIMAのTHANX。そっくりそのまま送りたい。
ありがとう を込めて歌った その気持ちに嘘はないと
さよならが 教えてくれた 離れるのは距離だけと
マリーンズが、野球が好きな気持ちはずっと変わらない。私たちはずっと同じなんだ。
大地にはこれからは新天地で、野球人としてまた一皮むけた活躍を見せてほしい。それが一番うれしいから。
がんばれ大地。
今まで本当にありがとう。
*1:我らが広報梶原さんの発案と聞く。本当にいつもありがとうございます。
*2:背景には山室晋也球団社長の着任ももちろんある。こちらも今年度退任。本当にありがとうございました。
*3:とあるYahoo!知恵袋の投稿「西武の秋山翔吾選手のファンサービスの良さには本当に感心してしまいました!」の文中の名言。
「一人何枚もサインを求める人にも嫌な顔1つせずにサインをして、写真撮影も非常に丁寧な対応で接してくれました。
野球オタクの気持ち悪い僕にも一緒に写真をとってくれました!感動
周りのファンも秋山選手がサインを断ってる姿は一度も見たことないと言うほどファンを大事にしているそうです!」
※https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12119260642
この後の流れも最高なのでぜひ読んでいただきたい投稿である。秋山メジャー行かないで。